コラム

クリニックの採用がうまくいかない3つの理由と解決策

「求人を出しても、なかなか応募がない。」
「毎月採用するためにお金をかけているのに、成果が出ていない。」
「やっと採用できたと思ったら、思っていた人と違った…」

そんな声は、中小企業の社長さんだけでなく、日々多忙な現場を抱えるクリニックの開業医や人事担当からもよく聞かれます。
どこの会社でも人手不足であり医療業界において「採用」に難航するクリニックはよく耳にします。
思うように人が集まらない背景には、採用に対する設計や戦略の不在があることも少なくありません。

本記事では、採用がうまくいかない理由と、明日から見直せるポイントを解説します。

採用媒体の種類と特徴を理解する

媒体選びが間違っている

まず最初に見直したいのが、「どこに求人を出しているか?」という点です。
とりあえず大手求人サイトに載せているから安心、営業された業者に言われるまま任せているというケース。
しかし、実際には求人媒体と求める人材のミスマッチによって、「誰にも見られていない」「見てほしい人に届いていない」ということが頻繁におきています。

【よくある失敗例】
• 手術介助の経験がある看護師が欲しいが、未経験の方から募集がくる
• パート勤務を募集しているのに、正社員中心の媒体に掲載している

まずは採用媒体の種類と仕組みを理解する

求人媒体の主な掲載・課金タイプを知りましょう。

■ クリック課金型(CPC型)
• 求人情報がクリックされた回数に応じて費用が発生する仕組み。
•少額コストで採用ができる可能性がある。
• 少額から始めやすく、表示されただけでは課金されないためコスト効率が良い
•採用できたら、掲載終了が可能なため、コストが余分にかからない
• ただし、クリック数=応募数ではないため、内容の魅力が重要であり実際に採用までに至らないため、コストがかかるケースも・・・

■ 掲載課金型(定額型)
• 一定期間(例:2週間、4週間など)ごとに固定費用を支払う形式
• 広く認知されやすいが、応募がなくても期間で設定されている費用は発生する
• 応募がない場合、複数回出稿でコストが膨らむ
•長期掲載で割引がある場合もあり
•課金する費用によっては上位表示されない、見られにくい場合もあり。

■ 成功報酬型(成果報酬型)
• 応募または採用が決定した時点で課金される。
• 採用できなければ費用はかからないが、1件あたりの費用は年収の〇%など高額になりやすい
•短期に辞めても報酬が発生する場合がある、契約条件で〇カ月以内に退職したら返金があるかもチェック必要

■ スカウト型(ダイレクトリクルーティング型)
• クリニック側から求職者に直接アプローチする形式
• 条件に合った人材にピンポイントで連絡できる反面、運用には手間がかかる

■ SNS・自社サイトでの求人ページ
• InstagramやFacebook、自院のHPなどを通じて求人情報を発信
• 採用コストを抑えながら雰囲気を伝えやすく、働いている姿をイメージしやすい
• 即効性は弱めだが、継続的に活用することで魅力ある求人情報になる

「媒体に掲載すれば人が来る」という時代ではありません。
ターゲットと手法の一致が、採用成功への第一歩です。
どの求人媒体があっているかも確認してきましょう。

求人原稿が“読み手目線”になっていないと応募は来ない

「アットホームな職場で…」「スタッフの雰囲気がよく…」
そんな思いを込めて求人原稿を書くのは素晴らしいことですが、実はそれだけでは不十分だと感じます。

応募者が本当に知りたいのは、「ここで自分がどんな働き方をできるか?」という実感レベルの情報です。

【応募者が気にしていること】
• シフトの融通が利くか?休みは取りやすいか?
• ブランクがあっても研修があるか?
• 残業はあるのか?
•働いている方の年齢層は?
• 給与・賞与・福利厚生はどうか?
• 自分に合った働き方ができる環境か?
•医師やスタッフについて

【改善のヒント】
• 他院と差別化できる福利厚生や制度があれば、しっかり言語化する
• シフトの柔軟さ、雰囲気、子育てとの両立実例など働き方を具体的に記載
• 求人原稿を、“自分がこの職場で働くとしたら”と想像できる文章にする

ある中小企業では、学生に「どんな職場だったら働きたくなるか」をヒアリングし、その声をもとに福利厚生そのものを見直した事例があると聞きました。
発信する前に、相手(求職者)が知りたいことを理解することが大切です。

面接が“ただの確認作業”では採用にはつながらない

ようやく面接までたどり着いたのに、
「なんとなく合わなかった」「印象がやイメージが違う」
そう感じたことはありませんか?

面接が一方通行の確認作業になっていると、応募者の本音を引き出すことができません。

【ありがちなNG面接】
• 志望動機をきく
•将来の展望を聞く
• 応募者の不安や希望に耳を傾けない
•職場でやりたいことを聞く

【改善のヒント】
• 雑談やアイスブレイクで、相手の価値観やコミュニケーションを確認する
• 子育て世代が安心できる体制(シフト調整、急な休みなど)を丁寧に説明
• 面接後に職場見学やトライアル勤務を提案することで、不安を解消
ただし、トライアル勤務で離脱する場合もあるため、院にとって必要かは検討する。

【面接官について】
•清潔感のある服装、髪型で。面接官の見た目も重要です。
•威圧感を与えない(求職者が緊張していると本当の姿が見えにくいため)


共感と安心を生む時間にできるかどうかが、採用成功のカギです。

小さなクリニックだからこそ、伝えるべき“強み”がある

中小規模のクリニックは、どうしても大手に比べて不利に見られがちです。
でも、実は“人との距離感”や“柔軟性”など、大手にはない魅力もたくさんあります。

たとえば…
• 院長との距離が近く、意見が伝えやすい
• スタッフ同士の風通しがよく、助け合える
• 時短勤務やシフトの融通がききやすい
• 子育て世代にも理解がある環境
•皆で一緒にクリニックを作っていける

こうした人間味のある職場文化こそ、今の求職者が求めているポイントでもあります。
給与や条件だけでなく、「雰囲気」「人」「共感」で選ぶ人も、確実に存在します。

採用難時代を乗り切るには「設計」と「伝え方」の見直しから

採用は「お金をかければうまくいく」ものではありません。
媒体選び、原稿設計、面接対応といった地道な工夫の積み重ねが、採用コストを抑え、ミスマッチを減らす最大の近道です。

そして、スタッフが定着し、安心して働ける環境が整えば、
それこそがクリニック経営の最大の安定要因になります。

人材は「人財」。
採用はコストではなく、未来への“先行投資”です。
小さなクリニックでも、「選ばれる職場」になることは、十分に可能です。