コラム

美容クリニック業界で業者・コンサルがつまずくチームビルディングとマネジメントの壁

近年、
「美容クリニック市場は成長している」
「医療者はマーケティングが弱い」
といった認識から、Web制作会社・広告代理店・コンサル会社などが美容クリニック業界へ参入するケースが増えています。

しかし現実には、

  • 参入後すぐに撤退する
  • 契約が長続きしない
  • 思うような成果が出ない

といった事例も少なくありません。

なぜ、美容クリニック業界では
業者・コンサルがつまずきやすいのか

その理由は、
施策やノウハウ以前に「人と組織の構造」にあります。

本記事では、業者・コンサル側が見落としがちな
「チームビルディング」と「マネジメントの壁」について、現場と経営がわかる看護師の視点から整理します。

美容クリニック業界は「ビジネスモデル」より「人の構造」が難しい

美容クリニックは一見すると、

  • 高単価
  • 自由診療中心
  • 広告次第で集客できそう

と、ビジネスとして魅力的に見えます。

しかし実態は、
人への依存度が非常に高い組織です。

  • 医師:強い専門性と裁量を持つ
  • 看護師:医療安全と現場オペレーションの要
  • 受付・カウンセラー:患者体験を大きく左右
  • 経営層・外部業者:集患・仕組みづくりを担う

これらが密接に絡み合っており、単純なマーケティング施策だけでは成果が出ません

業者・コンサルがつまずく多くのケースは、この「人の構造」を軽視したところから始まります。

失敗例①

独裁型マネジメントがチームを壊す

現場でよく見られる失敗の一つが、トップや経営層のマネジメントが独裁型になってしまうケースです。

特に多いのが、

  • Web業界や他業界で成功した人物が主導権を握る(外部コンサルタントや経営者など)
  • 医療知識が十分でないまま現場に介入する

という構図です。

この場合、現場では次のような反応が起こります。

  • 「医療を理解していないのに指示される」
  • 「安全面への理解が浅い」
  • 「現場の事情を無視している」

結果として、スタッフがトップについていかなくなり、組織が分断される
という状態に陥ります。

実際に、私自身が過去に介入していた美容クリニックでも、
外部コンサルタントが参入したものの、結果的に撤退に至ったケースがありました。

そのコンサルタントは、

  • 現場にはほとんど出向かない
  • 主なやり取りはチャットでの指示・確認のみ
  • 現場スタッフや患者対応を直接見ていない

という関わり方をしていました。

その結果、
現場で起きている事実と、コンサル側が把握している情報に大きな乖離が生じていきました。

情報のズレが経営判断のズレを生む

現場を見ないまま行われる指示や判断は、

  • 実際のオペレーションと噛み合わない
  • スタッフの負担を過小評価している
  • 医療安全・接遇の優先順位がずれている

といった問題を引き起こします。

その状態でマーケティング施策だけが進められても、
仮説検証ができないため、

  • なぜ成果が出ないのか分からない
  • 改善ポイントが特定できない
  • 数字だけを見て方向転換を繰り返す

という悪循環に陥っていました。

チームが崩れ、施策も機能しなくなる

最終的には、

  • 「ついていけない」と感じるスタッフが増え
  • 離職者が相次ぐ
  • 現場の空気が不安定になる

という状態が発生しました。

現場を理解していない施策は、
チームの負担を増やす一方で、
組織の信頼関係を壊してしまうのです。

結果としてそのコンサルタントは、

  • 十分な仮説検証ができない
  • 情報収集が不十分
  • 現場との乖離を修正できない

まま、契約終了・撤退という判断に至りました。

医療者は「管理される人」ではなく「専門職」

一般企業と医療機関の決定的な違いは、医療者が国家資格を持つ専門職であるという点です。

医師・看護師は、

  • 自身の判断が患者の身体に直結する
  • 強い責任と裁量を日常的に負っている

という特性を持っています。

そのため、
一般企業で有効だったトップダウン型・命令型のマネジメントは、
医療現場においては、医療者以外からの指示命令として受け取られた場合、強い反発を生みやすい傾向があります。

美容クリニックにおいて求められるのは、
指示や管理そのものを否定することではなく、
理解と尊重を前提に、現場の意見を聞きながら合意形成を重ねていくマネジメントだと考えています。

実際、現場で働く医師・看護師・スタッフは、

  • 患者さんに対して日々どのような思いを持って接しているのか
  • クリニックの良い点はどこだと感じているのか
  • 改善した方がよいと感じている点は何か

といったことを、日常的に肌で感じています。

患者さんと直接向き合う機会が多いからこそ、
現場には数字やレポートだけでは見えない情報が蓄積されているのです。

こうした日々の声や感覚を汲み取り、
経営や施策に反映していくことが、
結果的によりよい医療経営・チームづくりにつながると考えています。

失敗例②

マネジメント手法を変えられない

もう一つの大きな壁が、マネジメント手法を固定してしまうことです。

美容クリニックでは、

  • 立ち上げ期
  • 拡大期
  • 安定期

とフェーズが変化し、さらに、

  • 医師
  • 看護師
  • 事務・カウンセラー

と職種によっても、
最適な関わり方は異なります。

にもかかわらず、

  • 常に同じ管理方法
  • 常に同じ距離感
  • 常に同じ評価軸

で接してしまうと、
チームは機能不全を起こします

どの業種でも同じかもしれませんが、チームや個人の成熟度に応じてマネジメントを変えていくこと自体が、美容クリニックに関わる業者・コンサルに求められる重要なスキルです。

Web業界で成功しても美容クリニックでは通用しない理由

「Web業界で成果を出してきたのだから、美容クリニックでも通用するはず」

これは、よくある誤解です。

美容クリニックは、

  • 人のコンプレックス
  • 不安や恐怖
  • 医療リスク
  • 倫理・安全配慮
  • 医療広告ガイドライン

といった要素が複雑に絡み合う業界です。

効率・数字・改善スピードだけでは解決できない領域
数多く存在します。

必要なのは、
Webの成功体験をそのまま持ち込むことではなく、医療の文化を理解した上で融合させる視点です。

美容クリニック業界で成果を出す業者・コンサルの共通点

実際に成果を出している業者・コンサルには、
次のような共通点があります。

  • 医療業界、医療者の価値観を理解しようとする
  • 現場の安全性・心理的負担も尊重する
  • チームづくりを施策と同じくらい重視する
  • マネジメントを固定せず、柔軟に変える
  • 外から変えるのではなく「中と一緒につくる」
  • 現場を知る、知ろうとする姿勢

美容クリニックは、マーケティングだけで攻略できる業界ではありません

まとめ:美容クリニック参入で難しいのは「人と組織」

美容クリニック業界で
業者・コンサルがつまずく最大の理由は、
市場や施策ではなく、人と組織の構造にあります。

  • 医療者という専門職集団
  • 高い人依存性
  • 繊細なチームバランス

これを理解せずに参入すると、
どれだけマーケティングや施策に強くても失敗します。

逆に言えば、
医療 × 組織 × マネジメントを理解できる業者・コンサルは、
この業界で大きな価値を発揮できます。

——これが、現場から見た美容クリニック業界参入のリアルです。

・チームビルディングに課題を感じている
・現場をまとめるリーダーが育たない
・外部業者やコンサルを入れたものの、費用対効果に疑問がある

こうした悩みを抱えている開業医の先生は、一度ご相談ください。

現場を理解したうえで、医療・組織・経営のバランスを整理し、無理のない形で改善の道筋を一緒に考えます。

この記事を書いた人
古川 瑞紀
合同会社Mizu 代表
看護師・MBA(経営学修士)

クリニックの運営支援(経営・マーケティング・人事マネジメント)、保険診療クリニックへの自費診療導入、電子カルテやシステム導入まで幅広く対応。単なる助言ではなく、現場にあわせて伴走するスタイル。

現場もわかる、経営もわかる——その両面の視点で、再現性のある仕組みづくりと長期的な成長を支援します。