コラム

紙カルテはもう限界?医療DXで選ばれるクリニック経営に変わる方法

「紙カルテで十分」「うちは高齢患者が多いからシステムはいらない」――こうした声は、今も多くのクリニックで聞かれます。確かに現状は問題なく回っているように見えるかもしれません。
「紙カルテで十分」「うちは高齢患者が多いからシステムはいらない」――クリニック経営の現場では、今もこうした声を耳にします。
しかし、医療コンサルタントとして多くのクリニックに関わる中で感じるのは、その“現状維持”こそが未来のリスクだということです。

一見、紙カルテや電話予約だけでも診療は回ります。ですが、その裏にはスタッフの疲弊、患者層の高齢化による先細り、新規獲得の停滞といった課題が潜んでいます。
本記事では、紙カルテに依存するクリニックのリアルな問題と、医療DXがもたらす長期的なメリットについて、医療コンサルタントの視点から解説します。

紙カルテが残り続ける理由と課題

紙カルテからDX移行で気になる導入コスト

電子カルテや予約システムを導入しようとすると、どうしても初期費用がかかります。機器の購入、回線整備、スタッフ教育…「本当に回収できるのか?」と不安になるのは当然です。
しかし、医療コンサルタントとして強調したいのは、導入コストばかりに目を奪われると「現状維持=将来リスク」を見落とすということです。

導入方法がわからない不安

世の中には膨大な数の電子カルテや予約システムが存在します。どれを選ぶべきか、どの業者に任せればよいか分からず、「調べる時間もないから結局そのまま」となるケースは少なくありません。

ランニングコストと人的コストの比較不足

「システムは高い」という声はよく聞きますが、実際には紙カルテ運用も見えないコストがかかっています。
スタッフが残業してカルテ整理や予約確認に追われる――これこそが人件費という“隠れコスト”です。医療コンサルタントの立場から見ると、ランニングコストと人的コストを比較せずに「高い」と結論づけるのは大きな誤解です。

「今のままで満足」という落とし穴

「今のメンバーでなんとか回っているし、患者も困っていない」――現場からよく聞く言葉です。
しかし、その“なんとか”がスタッフの慢性的なストレスや離職につながり、長期的には経営に深刻な影響を与えます。

現場で実際に起きている問題

予約業務の煩雑さ

電話、メール、LINE、予約サイト…媒体が増えるほど確認作業は煩雑になり、ダブルブッキングや確認漏れのリスクが高まります。
医療コンサルタントが現場に入ると、**「スタッフが一日中予約確認に追われ、患者対応の時間が削られている」**という実態によく出会います。

自動化による業務効率化

予約システムを導入すれば、

  • 媒体の一元管理 → 確認作業が大幅に減少
  • リマインド通知の自動化 → キャンセル率の低下
  • 情報共有の迅速化 → 医療ミスやトラブルの防止

こうした変化により、業務短縮とスタッフのストレス軽減を同時に実現できます。

高齢患者が多いからDX不要?という誤解

高齢患者は確かに電話を好む

「うちは高齢者が多いからシステムは必要ない」という声は理解できます。実際に、多くの高齢患者は電話予約を安心だと感じています。

しかし患者層は変化していく

問題は未来です。高齢患者は年齢とともに通院頻度が減り、やがて離脱します。
既存患者に依存した経営は、必ず将来的な患者数の減少=経営悪化を招きます。

若い世代の常識は「スマホ予約」

20〜40代の患者は、

  • クリニックを探すときは口コミ・評価をチェック
  • 待ち時間や診療時間をネットで確認
  • 電話よりもアプリやLINEで予約したい

これが「当たり前」になっています。
この層を取り込めなければ、新規患者の獲得は難しくなり、経営は先細りしていきます。

医療DXは未来への投資

二本立ての戦略が可能

医療コンサルタントとして推奨するのは、

  • 高齢層には従来どおりの電話予約を残す
  • 若年層にはオンライン予約・口コミ発信を整備する

という二本立ての戦略です。
これにより、既存患者の安心感を維持しながら、新規患者層を獲得できます。

DX導入で得られる未来

医療DXは便利なツール導入ではなく、

  • スタッフの離職防止
  • 患者満足度の向上
  • 新規患者層の安定的な獲得

といった「未来のクリニック経営を守るための投資」なのです。

まとめ

紙カルテや電話予約に固執するのは「今を守る」選択にすぎません。
しかしその裏には、スタッフ疲弊・新規患者の取り込み不足・経営悪化といったリスクが潜んでいます。

医療コンサルタントの視点から断言できるのは、医療DXは未来への必須投資だということです。
「今は大丈夫」ではなく「今後も選ばれるクリニック経営」を実現するために、今こそDXへの一歩を踏み出すべき時なのです。


FAQ

Q1. 高齢患者が多い場合でもDX化は必要ですか?
A. はい。高齢者には電話予約を残しつつ、若い世代にはオンライン予約を導入する二本立てが最適です。

Q2. 導入コストはどのくらいかかりますか?
A. システムによって異なりますが、初期費用は数十万〜数百万円、ランニングは月額数万円程度です。人件費削減や新規獲得効果で回収可能です。

Q3. スタッフ教育が心配です。
A. 導入時は負担がかかりますが、クラウド型システムは操作がシンプルで、1〜2か月で習熟するケースが大半です。

Q4. DX導入を見送った場合のリスクは?
A. スタッフ離職、新規患者の取り込み不足、経営悪化など、中長期的に大きなダメージを受ける可能性があります。

この記事を書いた人
古川 瑞紀
合同会社Mizu 代表
看護師・MBA(経営学修士)

クリニックの運営支援(経営・マーケティング・人事マネジメント)、保険診療クリニックへの自費診療導入、電子カルテやシステム導入まで幅広く対応。単なる助言ではなく、現場にあわせて伴走するスタイル。

現場もわかる、経営もわかる——その両面の視点で、再現性のある仕組みづくりと長期的な成長を支援します。