コラム

怪しい業者にだまされない!クリニック経営で押さえるべきチェックリスト

クリニック経営において、コンサルタント、広告代理店、医療機器販売、内装工事などの外部パートナーに依頼する場面は少なくありません。
一方で「思ったより費用がかかった」「契約が不透明で困った」といったトラブルも後を絶ちません。弁護士と話をした際に、医師からの相談が増えていると聞いたこともあります。

本記事は、私自身がこれまでクリニック経営に関わる中で実際に相談を受けた内容や経験をもとにまとめています。
一部に個人的な見解も含まれますが、すべての業者がそうだというわけではありません。あくまで「注意点の一例」として参考にしてください。

なぜ医療業界には注意すべき業者が多いのか

医療業界には「高単価」「専門性が高い」「経営の知識が乏しい医師がいる」という特徴があります。これは外部業者にとって“参入しやすく、契約を取りやすい市場”になりがちです。

  • 情報の非対称性
    医師は医療知識のプロですが、広告・経営・内装といった分野には詳しくないケースが多い。
  • 契約の複雑さ
    成果報酬型の広告契約や、医療機器のリース契約など、条件が複雑で理解しづらい。
  • 効果の測定が難しい
    集患や売上アップといった成果は一概に数値化できず、検証が不十分なまま契約が進むこともある。

こうした背景から、医師が不利になりやすい契約や提案が潜んでいることがあります。

なぜだまされるのか?開業医が陥りやすい理由

開業医の先生からよく聞くのは、
「こんなはずじゃなかった」「まさか自分がだまされるとは思わなかった」という言葉です。

その背景には、医療と経営はまったく別の専門分野という現実があります。
医師は診療に関してはプロですが、経営や広告、契約といった分野は体系的に学ぶ機会が少なく、結果として業者との情報格差が大きくなります。

  • 経営を学んでいないため、数字や契約書のリスクを見抜けない
  • 「患者のために良いことなら」と思い、甘い言葉を信じてしまう
  • 忙しさの中で契約条件をじっくり精査できない

開業医の先生が語った本音

知り合いの歯科医師の先生はこう話していました。

「もっと早く経営の勉強をしておけばよかった。
医療のことは学んできたけれど、経営に関しては誰も教えてくれなかった。」

多くの医師が同じ課題を抱えています。だからこそ、最低限の経営知識を持ち、信頼できる相談相手を持つことが、だまされないための最大の予防策になります。

注意すべき業者の特徴チェックリスト

無料・極端に安すぎる提案

ベンチャー企業が実績作りの戦略として挑戦的な価格を出すことはありますが、一部では「完全無料」や「明らかに安すぎる」提案には裏があることもあります。後から高額な追加費用が発生したり、データを握られて契約を継続せざるを得なくなるケースもあります。

「親切・親身」を過度にアピール

親切や親身さは当然ですが、それ自体は利益を得るための入り口である場合もあると理解しておきましょう。
実際に「親切だから大丈夫」と思って契約した結果、契約条件が不透明で高額な支払いにつながった相談もあります。甘い言葉や接待的な好意には慎重になるべきです。

どこの誰か不透明

名刺や会社情報を確認しても実態が見えない業者も存在します。まれに名前や肩書きが実際と異なることもあり、素性が不明な相手は要注意です。契約前には必ず法人登記や所在地を確認しましょう。

現場に一度も来ないコンサル

クリニックの改善には、現場の流れやスタッフの動きを理解することが欠かせません。現場に一度も来ないで提案するコンサルタントはリスクが高いと個人的に考えています。それぞれの職種から見える世界が異なるため、依頼主の話だけでは整合性がとれない場合もあります。机上の理論では現実的な改善策は出せません。

関連業者ばかり紹介する

特に開業前に多いのが「内装業者」や「広告代理店」を一方的に紹介されるケースです。紹介の裏で、相場より高額になってしまう可能性もあるため、必ず相見積もりや第三者の意見を確認しておくと安心です。

一方で、関連会社でチームを組み、連携体制が整っていることで効率的かつ優秀なサポートが受けられる場合もあります。すべてが悪いわけではなく、最終的には医師自身の判断力が試される部分です。

注意が必要な業者と信頼できる業者の比較

チェックポイント 注意が必要な業者の特徴 信頼できる業者の特徴
価格
費用の根拠・内訳
無料/極端に安い
後から追加費用・長期縛り・別の目的のリスク。
根拠ある価格
見積の内訳と想定ROIを事前提示。
態度
コミュニケーション姿勢
過度な親切・ごちそう
契約を急がせる・甘言が多い
丁寧だが距離感
判断材料を淡々と提供。即決を迫らない。
実態
登記・実績・担当者情報
不透明
登記や所在地・実績が曖昧/偽名例も。
明確
法人情報・担当者経歴・医療分野の実績を開示。
現場対応
現地確認・運用理解
来訪なし
机上提案のみで現場未確認。
現場把握
動線・人員・導線を踏まえた改善提案。
紹介
比較提案・利益相反
関連先のみ推奨
相場より高額化の可能性も。
複数社比較
相見積もり前提・条件比較表を提示。

実際に寄せられた相談事例

開業支援や広告契約において、「契約内容が十分に確認されないまま進み、結果として高額な負担となった」という相談は少なくありません。

いずれも「業者が悪い」というよりは、契約前の確認や相見積もりが不十分だったことが原因でもあります。

「○○が言っていたから大丈夫」ではなく、必ず自分の目で確かめること。そして、経営の重要な判断を人任せにしない姿勢が、リスクを避けるためには欠かせません。

信頼できる業者を見極めるポイント

  • 契約の透明性:解約条件や費用内訳が明確かどうか
  • ROIの説明力:投資回収のシミュレーションを数字で示せるか
  • 現場理解:机上の空論でなく、実際に現場を理解しているか
  • 長期的視点:短期的な売上ではなく、持続的な成長を意識しているか
  • 情報開示:複数案を提示し、比較検討を促してくれるか

医師ができる具体的な行動

  1. 相見積もりを必ず取る(最低3社以上)
  2. 契約前に弁護士や専門家に内容を確認してもらう
  3. 同業の医師や知人に口コミを聞く
  4. 「人柄」ではなく「数字と契約」で判断する
  5. セカンドオピニオン的に相談できるパートナーを持つ、だが判断するのはあくまでも自分

まとめ

クリニック経営では外部業者の力を借りることは避けられません。しかし、選び方を誤ると大きな損失につながる可能性があります。

  • 無料や安すぎる提案には注意
  • 親切さや甘い言葉だけで判断しない
  • 契約内容・ROI・現場理解度を必ず確認

ここで紹介した内容は、私が現場で見聞きしてきた事例や相談をもとにしています。もちろん、すべての業者が当てはまるわけではありません。
ただし、こうした特徴を知っておくことで、不必要なリスクを回避しやすくなります。

👉 関連記事:「医療コンサルは怪しい?信頼できる右腕の見つけ方」 もあわせてご覧ください。

FAQ

Q. なぜ医療業界には注意すべき業者が多いのですか?
A. 医師は医療の専門家ですが、経営や広告の知識が不足しがちで、情報の非対称性を利用されやすいためです。

Q. 無料や安すぎる業者は必ず怪しいですか?
A. 必ずしもそうとは限りませんが、中には注意して確認する必要があります。

Q. 信頼できる業者の見極め方は?
A. 契約の透明性、ROIの説明力、現場理解度、複数社比較の提案があるかを確認してください。

この記事を書いた人
古川 瑞紀
合同会社Mizu 代表
看護師・MBA(経営学修士)

クリニックの運営支援(経営・マーケティング・人事マネジメント)、保険診療クリニックへの自費診療導入、電子カルテやシステム導入まで幅広く対応。単なる助言ではなく、現場にあわせて伴走するスタイル。

現場もわかる、経営もわかる——その両面の視点で、再現性のある仕組みづくりと長期的な成長を支援します。