コラム

医療従事者のITリテラシー向上の重要性【クリニック経営の課題】

近年、国や関連機関が主導する形で医療DX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されていますが、クリニック支援をしている中で実際にはなかなか進んでいないと感じることが多いです。
その要因は多岐にわたりますが、本コラムでは「医療従事者のITリテラシーの低さ」に焦点を当てていきます。

医療現場におけるITリテラシーの現状

新しいサービスやシステムの導入に抵抗を示す医療従事者は少なくありません。
看護師に焦点を当てると、ITを活用する機会は主に電子カルテの入力に限られ、高度なITスキルが求められる場面は現状では多くありません。

約10年前、私が看護学生だった頃の課題は手書きが主流で、パソコンを学ぶ機会はほとんどありませんでした。
現在ではiPadやパソコンが主流になっているかもしれませんが、私の時代は基本的なタイピングや電子カルテの操作ができれば仕事ができてしまうため、ITに関する深い知識を持たないまま業務を遂行しているケースが多いのです。

私自身、最初に勤務した病院では紙カルテが使われており、現在関わっている小規模クリニックの中には、いまだに紙カルテを使用している、または電子カルテと紙媒体を併用しているところもあります。
医療DXの重要性が認識されているものの、予算や導入のハードルが高く、なかなか進まないのが現状です。
そのため、システムを使用する医療従事者のITリテラシー向上が大きな課題となっています。

私自身の経験から学んだこと

実を言うと、看護師時代の私はほとんどパソコンを使えませんでした。
「一生パソコンを使う仕事をすることはない」と思っていたほどで、パソコンに対する苦手意識が強かったのです。

  • WordとExcelの違いがわからない
  • 表を作成できない
  • PDFの概念が理解できない
  • 保存したPDFの場所がわからない

本当にパソコンができない人でした笑

しかし、MBAを取得するために大学院へ進学し、看護師以外の働き方を模索する中で、パソコンが使えないことが致命的な弱点であると痛感しました。

大学院ではパソコンスキルが当然のものとされており、その現実を目の当たりにして、自分のITスキルの低さを恥ずかしく感じたのを今でも思い出します。まさか大学院の先生も、ここまでパソコンができない学生が入ってくるとは思ってもいなかったでしょう。

ITスキルを身につけることで、便利なツールが数多く存在することにも気づきました。
結果的に、パソコンを使えることが「看護師としての武器」となり、キャリアの幅を広げる大きな強みとなりました。
広告代理店へ転職し、ITについて学んだことも、非常に有益だったと感じています。

医療DX時代に求められる医療従事者の変化

医療DXが進む中で、医療従事者も時代の変化に対応していくことが求められています。現在、医療従事者の働き方は多様化しており、

  • 企業に勤める看護師
  • 美容クリニックを経営する看護師
  • トラベルナース

など、さまざまな選択肢があります。どの働き方を選ぶにしても、国の施策や医療現場の変化に適応できる能力を持つことが重要です。

ITリテラシーの向上が未来の医療を支える

日本の高齢化社会が進行する中、現行の医療システムではいずれ限界を迎える可能性があります。そのため、医療従事者が今からできることの一つが「ITリテラシーの向上」です。

ITリテラシーの向上は、看護師としての業務に役立つだけでなく、他のキャリアへの道を広げる強みになります。
また、ITスキルを持つことで「看護師以外の働き方」という選択肢を持つことができ、心の安定につながる場合もあります。

「看護師しか経験がないから、病院やクリニックでしか働けない」と思い込む必要はありません。
医療従事者がより柔軟に働き、自らの可能性を広げるためにも、ITリテラシーの向上が今後ますます重要になっていくと感じています。

私自身、生成AIや新しいシステムを積極的に活用し、自分のスキルをさらに高めていきたいと考えています。

よくある質問

Q. クリニックスタッフのITリテラシーを効率よく向上させるには、どのような研修方法が有効ですか?
まずは電子カルテや予約システムなど、日常業務に直結するツールの操作研修から始めるのが現実的です。外部研修の活用に加え、ITスキルの高いスタッフが院内でミニ勉強会を開く「院内IT推進リーダー」の仕組みを作ると、コストを抑えながら継続的なスキルアップが期待できます。
Q. 電子カルテ導入を検討していますが、スタッフがついてこられるか不安です。どう対策すればよいですか?
導入前にベンダーによる操作研修を複数回設定し、スタッフが慣れる時間を十分に確保することが重要です。また、紙カルテとの併用期間を設けて段階的に移行するアプローチが、現場の混乱を最小限に抑える上で有効です。
Q. 医療DXに対応できるスタッフを採用・育成するうえで、院長として何から取り組むべきですか?
採用時にITへの適応意欲を確認する面接設計を行い、入職後はITスキルの習得を評価・昇給に反映させる仕組みを整えることがモチベーション維持につながります。院長自身が生成AIや業務効率化ツールを積極的に活用し、変化への姿勢をスタッフに示すことも大切です。

References

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この記事を書いた人
古川 瑞紀(ふるかわ みずき)
合同会社mizu 代表 / 医療経営コンサルタント
看護師・MBA(経営学修士)

看護師として10年以上、脳外科循環器内科の急性期病棟、内科クリニック自費訪問看護ステーションの現場実務を経験。看護師として働きながらMBA(経営学修士)を取得し、広告代理店でマーケティングを実践した後に独立。並行して、美容外科・美容皮膚科クリニックの経営・事務局を担い、複数の医療法人をサポートしながら、オペレーション設計マーケティング人事マネジメントの3領域で「仕組み作り」を強みに、クリニックの売上向上・経営改善に貢献してきた。

現在は合同会社mizu代表として、開業医・クリニック院長・医療法人向けに、クリニック開業支援経営改善集患・MEOマーケティング採用支援・人事評価制度設計電子カルテ・予約システム導入自費診療メニュー設計まで一気通貫で伴走する医療経営コンサルティングを展開。オペレーション・マーケティング・人事の3軸で再現性のある仕組みを設計することを得意とし、美容医療(美容外科・美容皮膚科の経営/事務局)・保険診療(内科)・在宅医療(自費訪問看護)の現場経験と医療法人運営支援の経営経験を併せ持つ医療コンサルタントとして、クリニックの長期的な売上成長と組織づくりを支援している。