コラム

診療報酬改定2026年クリニックへの影響と今すぐできる対策

「2026年の診療報酬改定、うちのクリニックは大丈夫だろうか」——そんな不安を抱えながら検索された院長先生、まさにこの記事はあなたのために書きました。

私は看護師として10年以上、病棟・外来・在宅と現場を歩き、その後MBAを取得して医療経営コンサルタントとして独立しました。これまで数十件のクリニックの経営支援に携わってきた経験から言えることがあります。診療報酬改定で経営が傾くクリニックと、改定を追い風にするクリニックの差は「情報を得るタイミング」と「準備の深さ」にある、ということです。

この記事では、2026年診療報酬改定のポイント、クリニック経営への具体的な影響、そして今から動ける実務レベルの対策をお伝えします。改定の詳細は厚生労働省の告示・通知をご確認いただく必要がありますが、「何をどの順番で考えればよいか」の地図として役立てていただけますと幸いです。


2026年診療報酬改定の大きな方向性——クリニック院長が押さえるべき3つの軸

診療報酬改定は2年ごとに行われますが、2026年は診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の「トリプル改定」ではなく、診療報酬単独の改定年にあたります。ただし、2024年改定の方向性が引き続き強化・精査される形になると見込まれており、以下の3軸が軸になると私は考えています。

① 医療DX・オンライン診療のさらなる推進

電子カルテの標準化、マイナ保険証の活用、オンライン資格確認の完全普及が前提となりつつあります。2024年改定で導入された「医療DX推進体制整備加算」の要件充足状況が、2026年改定での評価に直結する可能性があります。「まだ準備中」では遅い、というのが現実です。

② かかりつけ医機能の評価強化

国は「地域でかかりつけ医機能を担うクリニック」を診療報酬で優遇する方向を継続しています。具体的には、複数疾患を持つ患者の継続管理、在宅・介護との連携、健康相談への対応などが評価軸になっています。私がコンサルで訪問した内科クリニックでは、「加算の要件は知っていたが、記録の取り方が不十分で算定できていなかった」というケースが複数ありました。要件を満たしていても記録がなければ算定は認められない——これは現場でよく起きる失敗です。

③ 医師の働き方改革・人件費上昇への対応

2024年4月から医師の時間外労働規制が適用されました。スタッフの賃上げ原資としての診療報酬の底上げが議論されており、人件費コストの増加を診療報酬でどう吸収するかが経営上の最重要課題になっています。


クリニック経営への具体的な影響——私が現場で見てきたリスクと機会

収益が下がりやすいクリニックの特徴

  • 算定漏れが多い:加算の要件を把握していない、またはスタッフが算定の判断をできていない
  • 施設基準の届出が古い:取得当時の要件で止まっており、要件変更に気づいていない
  • 患者単価の低下を放置している:改定で点数が下がった項目の補填策を考えていない
  • 電子化・DX対応が遅れている:加算の取得機会を逃し続けている

改定を追い風にできるクリニックの共通点

私がコンサルで関わった、改定のたびに収益を伸ばしているクリニックには共通点があります。それは「改定の半年前には動き始めている」ことです。ある内科・生活習慣病専門クリニックでは、かかりつけ医機能に関連する加算を3種類新規届出し、年間で約180万円の増収につながった事例があります。これは規模を変えずに、「仕組み」と「記録」を整えただけで達成できた結果です。


今すぐ着手すべき実務対策——チェックリストと優先順位

STEP1:現状の施設基準・加算の棚卸し(目安:1〜2週間)

  • 現在届け出ている施設基準・加算を一覧化する
  • 各加算の要件(人員・設備・記録)を最新版の通知で確認する
  • 算定できているはずなのに算定していない項目がないか確認する
  • 届出要件を満たせていない加算がある場合、その理由を特定する

STEP2:医療DX対応の進捗確認(目安:1ヶ月)

  • オンライン資格確認の運用状況を確認する
  • 電子処方箋の対応状況を確認する
  • マイナ保険証の利用率を把握し、患者への案内を整備する
  • 医療DX推進体制整備加算の要件充足状況を確認する

STEP3:かかりつけ医機能に関する記録・体制の整備(目安:2〜3ヶ月)

  • 継続的に管理している患者の疾患数・処方状況を把握する
  • 健康相談・在宅対応の記録フォーマットを整備する
  • 他医療機関・介護事業者との連携実績を記録する仕組みを作る

STEP4:収支シミュレーションの実施(改定告示後すぐに)

改定の告示が出たら、現在の患者構成・診療内容に当てはめて収益の増減を試算することが不可欠です。「うちは影響ない」と思っていたクリニックが、シミュレーションをしてみたら年間数十万円単位で収益が変わっていた——というケースは珍しくありません。


よくある失敗パターンと回避策

失敗①「改定後に気づいて慌てて届出」

施設基準の変更に気づかず、算定できない期間が数ヶ月続くケースです。改定の施行は4月1日が多いため、2月〜3月には準備を完了させておく必要があります。

失敗②「スタッフに算定の判断を任せきり」

院長は加算を知っていても、実際に算定するスタッフが要件を理解していないと機能しません。改定のタイミングでスタッフ向けの院内勉強会を1回実施するだけで算定漏れが大幅に減る、というクリニックを私は何件も見てきました。

失敗③「コスト削減だけを考えて患者サービスを落とす」

点数が下がった項目を補おうとして、スタッフを削減したり診察時間を短縮したりすると、患者満足度が下がり、長期的には患者数の減少につながります。改定への対応は「収益を守る」と「医療の質を守る」を両立させる視点が必要です。


まとめと行動提案

2026年診療報酬改定は、準備をしたクリニックとしなかったクリニックの差が明確に出る改定になると私は見ています。大切なのは「改定が来てから動く」のではなく、「改定が来る前に仕組みを整える」ことです。

今日からできることを整理すると、以下の3点です。

  • 現在の施設基準・加算を棚卸しし、算定漏れがないか確認する
  • 医療DX対応の進捗を確認し、遅れている部分を洗い出す
  • 改定告示後すぐに収支シミュレーションを実施できる準備をしておく

「うちの状況に当てはめると、具体的に何から手をつければいいのか分からない」という院長先生は、ぜひ一度ご相談ください。私が代表を務める合同会社mizuでは、クリニックの規模・診療科・現状の体制に合わせた診療報酬改定対策のご支援を行っています。看護師としての現場経験とMBAの経営視点の両方から、現実に即した提案をお伝えできます。

改定の波を、経営の好機に変えるための第一歩を、一緒に踏み出しましょう。

よくある質問

Q. 2026年診療報酬改定の告示はいつごろ発表され、準備はいつから始めればよいですか?
例年、改定の告示は施行(4月1日)の約1〜2ヶ月前となる2月下旬〜3月上旬に出されます。ただし、改定の大枠は前年末の中医協答申でほぼ固まるため、遅くとも2025年秋には施設基準・加算の棚卸しに着手し、2026年1〜2月には届出準備を完了させておくことが理想です。「告示を待ってから動く」では間に合わないケースが多いため、方向性が見えた時点で先行して準備を進めることをお勧めします。
Q. 医療DX推進体制整備加算の要件を満たせているか、どうやって確認すればよいですか?
まず厚生労働省が発出している施設基準に関する通知・疑義解釈を最新版で確認し、オンライン資格確認の運用状況・電子処方箋への対応・マイナ保険証の院内掲示といった要件を一項目ずつチェックリストで照合するのが確実です。要件は改定ごとに見直される可能性があるため、届出済みであっても「取得時の要件で止まっていないか」を定期的に再確認する習慣が重要です。不明点はレセプト審査を行う支払基金や国保連、あるいは地方厚生局に直接問い合わせることで確認できます。
Q. 小規模な個人クリニックでも、かかりつけ医機能に関連する加算は現実的に算定できますか?
規模の大小よりも「記録の整備」と「体制の届出」が算定可否を左右するため、医師1名・スタッフ数名の個人クリニックでも要件を満たせばもちろん算定可能です。実際に私がコンサルで支援した小規模内科クリニックでも、患者の疾患管理記録と連携実績の記録フォーマットを整備しただけで複数の加算を新規取得できた事例があります。まずは自院の患者構成(複数疾患を持つ継続患者の割合など)を把握し、どの加算の要件に近いかを確認することが第一歩です。

References

  1. 厚生労働省. 令和6年度診療報酬改定について(告示・通知・疑義解釈). 厚生労働省ウェブサイト. 厚生労働省
  2. 中央社会保険医療協議会(中医協). 令和6年度診療報酬改定の概要(医科). 厚生労働省. 中医協資料
  3. Matsuda S, et al. The Japanese diagnosis procedure combination / per-diem payment system (DPC/PDPS) and its impact on hospital management and medical practices. Health Policy. 2008;85(3):276-283. PubMed
  4. Ikegami N, et al. Japanese universal health coverage: evolution, achievements, and challenges. Lancet. 2011;378(9796):1106-1115. PubMed
  5. Nomura H, Nakayama T. The Japanese healthcare system. BMJ. 2005;331(7518):648-649. PubMed
この記事を書いた人
古川 瑞紀
合同会社Mizu 代表
看護師・MBA(経営学修士)

クリニックの運営支援(経営・マーケティング・人事マネジメント)、保険診療クリニックへの自費診療導入、電子カルテやシステム導入まで幅広く対応。単なる助言ではなく、現場にあわせて伴走するスタイル。

現場もわかる、経営もわかる——その両面の視点で、再現性のある仕組みづくりと長期的な成長を支援します。